◆台湾にはたくさんの植民地建築物が建てられ、今なお現役で役割を果たしているものが多くあります。
その中の2つの建物をご紹介します。
■旧台北医院本館(現台湾大学付属病院) 台北市指定古跡
1916年に旧台湾総統府の近くに建てられました。
設計は総督府営繕課で赤煉瓦に白色の帯状部材が配された「辰野式」建築です。
この病院は植民地に移住した人々に本国と同様な医療を提供し、
また被統治国へ日本の支配力を見せるという目的がありました。


この建物は現在台湾大学付属病院として使われており、病院施設として地下鉄やタクシーなどを利用して訪れた人々が内部のホールを行き交っていました。


↑内部の様子です。当初の姿を留めています。


ディテールも素敵です。
建具は木製サッシが使われています。
中には歪んだガラスも多く、古いものをそのまま使っていることが分かります。
表の外部には気持ちの良いカフェテリアがあります。
テイクアウトのお店があり建物の雰囲気を損なうことのない店構えです。
■旧制台北高等学校(現国立台湾師範大学) 講堂は台北市指定古跡
1922年に建設された学校建築です。
旧総督府から南東に下った地区にあり、近くには旧台北帝国大学(国立台湾大学)もあります。


↑本館と講堂


↑廊下そして会議室として使われている部屋
内部も当初の姿のまま使われています。窓の建具は木製です。


↑建物内部の柱頭と照明のディテール
台湾は白蟻による被害が多く、コンクリートの建物が早い時期から建てられましたが
それに先だって赤煉瓦が普及していました。「辰野式」建築にみられるように
外壁にむき出しの赤煉瓦が使われ、旧台湾総督府などはそれに白色の石材が配されています。
しかし旧台北医院本館では赤煉瓦に配される白色の部分はテラゾーが用いられています。
この旧制台北高等学校でも内部外部とも様々な部位でテラゾーが使われています。



↑階段の床のディテール
今回の台湾訪問でいろいろな歴史的建造物や街並みを見てきましたが、
最も印象に残ったのがこの二つの建物です。建築後100年近く経った建物なので
現在は資料館や記念館のような使われ方をしているのかと思っていましたが、
訪ねてみると病院は病院として、学校は学校としての用途で普通に使われていることに驚きました。
どちらの建物も改修された様子がなく(さすがにトイレは新しい素材でパーティションを建てて、
便器や手洗器は現代の物に替えていますが、空間はそのままの姿です。)
当初の姿のままですが、どこも手入れがきちんとされていて気持ちよく、
清々しい状態で使われています。
古い建物でもこうして生き生きと使い続けることができることにとても感動を覚えました。
学ぶべきことが多いと思います。
台北には実に多くの日本の統治時代に建てられた建物が残っています。
今回紹介したように当初の用途のまま使われ続けている建物もたくさんあります。
その他建築当時の目的から、美術館、イベントスペース、店舗などに
用途変更して使われている建物もあります。
また数は少ないですが日本風の木造建築の住宅も残っています。
既に荒れ果てて崩れそうな建物もありますが、
近年木造住宅を改造して喫茶店などに利用することもおこなわれているようです。
台北には富山空港から直行便が運航されていて、気軽に訪れることのできる都市です。
ぜひ台湾の歴史的建造物を見る旅行をお勧めいたします。
台湾の食べ物にも満足していただけると思います。
byぶん